『遠まわりする雛』 米澤穂信 角川書店

遠まわりする雛

遠まわりする雛

古典部4人のメンバーの中では僕は福部里志が一番好きだ。もしかしたら全小説のキャラクターの中でも一番、かもしれない。
 「わたし、気になります」といった癖になる言葉が多くあるが、「データベースは結論を出せない」なんて心惹かれすぎて涙が溢れることよ。普段は飄々としているけれども、からこそ心情を吐露するシーンは映えるというものだろう。
期待されてかつ結果を残せる人間というのは少数しかいないと思うんだ。期待されてうまくいかず挫折してしまった時、ああ俺ってなんであんなことに対して情熱を注いでいたんだろうと一歩引いてみてしまい、なんだかすべてがどうしようもなくなってしまったあとというのは、いかにしてこんな気持ちを二度と味わないようにするか考えるものだと思う。そうして出された結論というのは、いとおしいものだと思いませんか。僕はシンパシーを感じます。これからの福部里志の成長が楽しみになる作品だった。
 さて、「遠まわりする雛」を読んで思うことだが、事の発端や318ページ19行目とか見ていると陣出の行く末は現時点では暗いんだろうね。でも現時点だよ、まだ2年ある!