わからなくてもそれはそれで良い

 ネットを漁って奇術師(クリストファー・プリースト著、古沢嘉通訳、早川文庫FT)の情報を探した。動機として、自分がこの本に書かれている事を読み取っているか不安になったからだ。で調べた結果、良くわかってなかったみたいだ。叙述トリックがどうのこうのと言うのはとにかくよくわからなかった。もちろん読んでいて何か変だなと気づいたところはあるが、読んでてわかるのだろうとあまり気も止めずに読んでいた。でそのままラストまで読んでしまった。そしてラストもよく分からなかった。
 で言いたいことは何かと言うと、確かによく分からなかったのだけれど、だから面白くなかったとは言えず、むしろ凄く楽しめた。もちろん自分の中に謎が残っているのだからもやもやしたものは残るのだが、まあそれはそれでいいじゃんと割り切っている自分がいる。おそらく、自分にはミステリを読む素養というのが決定的に欠落しているのだろう。じゃあ何をもって楽しんだかというと、二人の奇術師の心の動きだと思う。つまらないすれ違いによる確執の始まり、互いに繰り返される妨害の応酬を繰り返した後、最終的にこの言葉が待っている。
  ボーデンとわたしは敵同士であるよりも、良き理解者になっていたかもしれない
 なんとなくいいなあと感じてしまう。

 失踪HOLIDAY(乙一著、角川スニーカー文庫)に収録されているしあわせは子猫のかたちもそんな読み方をしていたと思う。誰が犯人かは全く興味が沸かなかったし、そう言うふうに話を持って行くのかと少し焦ったような気もする。これは良い読み方をしてないと思うけれども。

 結論として、わからなくてもそれはそれで良い