コニー・ウィリス『航路』[上・下] ソニーマガジンズ

コニー・ウィリスの小説は解説にも書いてあるけど「もどかしさ」だと思う。『航路』『ドゥームズディブック』『犬は勘定にいれません』それぞれにもどかしさの要素をみつけることができる。『ドゥームズディブック』では近未来パートにおいての「なにかがおかしい」という言葉でわかるし、『犬は勘定にいれません』ではミスターCをつきとめようと奮闘している過程に感じられるかなあと思う。
まあその感覚を感じさせてくれる作家というのは多分他にもいるんだろうけど、そのもどかしさを感じさせつつ、話の展開にかったるしさを感じさせない点が一番の魅力なのかなあと思う。じゃあそのかったるしさを感じさせない原因は何かというと、文体にあると思う。会話文と地の文がつながっているのが多く見られる。これによってまず文にリズムがうまれるし、それに展開にもリズムがが発生する。ここら辺にリーダビリティの高さの原因があるような気がする。でもその「ウィリス調」になれるまでの最初の方100ページぐらいは話に乗りにくいかもしれない。でもいったん乗ってしまえば寝食忘れる読書体験になること間違いなしだと思われます。
後長すぎるのが問題かもしれないけど、僕には読み出したら問題にならなくなった。もちろん読む前には逡巡があったけど、それも、メッセージがそこにあるのに伝わらないというメタファーなのかと勘ぐってしまった。半分冗談だけど、本気でそんなことを思わせてくれる作品だったと思う。後から考えてあんなのいらないと思うエピソードがこれだけ長いのに思い浮かばないんだから。