小川隆・山岸真編「80年代SF傑作選・上」ハヤカワ文庫SF

「ニューローズホテルウィリアム・ギブスン
サイバ―じゃないパンク作品といったところだろう。でもギブスンにはそんな事どうでもいいような気がする。とにかく文章がかっこいい。スタイリッシュで疾走感にあふれているっていうところだろうか。
「スキンツイスター」ポール・ディ=フィリポ
肉体改変が主題になっているのだが、今読むと少し厳しいなあと思える。物語の部分もあまり入っていけなかった。なんとなく読後感はテリ―・ビッスン「冥界飛行士」に似ていた。
「石の卵」キム・スタンリー・ロビンスン
ん?と思った作品だったけど、そんなに悪くは無いと思う。現実崩壊してしまってどうしようもない状況で、「北へたどってみよう」と思うあたりで、陳腐だけど人生だなんて思ってみたり。
「わが愛しき娘たちよ」コニ―・ウィリス
僕はこの作品には偏見は無いと思う。しかし書き足りない部分はあるんじゃないかと思う。
「ブラインド・シェミイ」ジャック・ダン
「スキンツイスタ−」に似ているなあと思える。でもこっちの方が話としてはおもしろかった。ギャンブルとは相性が良いなあ。
北斎富嶽二十四景」ロジャー・ゼラズニイ
とにかく無駄に長いと思う。もっとすっきりできたはず。二十四ある章の大半はいらなかったんじゃないかなあ。とはいうものの最終ページは美しかった。このために長かったならまあ納得するような気もする。
「みっともないニワトリ」ハワード・ウォルドロップ
まず語り口を楽しめた。すこしとぼけた感じって所か。話の方も知識の面で地ならしをしっかりしてあってつっかかえることはあまりなかった。
「竜のグリオールに絵を描いた男」ルーシャス・シェパード
光景を思い描いて圧倒された。谷に鎮座している馬鹿でかい竜、その周りに発展した街。ファンタジーあふれる光景だと思う。
「マースホテルから生中継で」アレン・M・スティー
火星をフロンティアとして肯定的にとらえている所が印象に残った。傲慢な立場かも知れないが、フロンティアというのはいつの時代にも残っていて欲しいと思う。
シュレーディンガーの子猫」ジョージ・アレック・エフィンジャー
タイトルどおりという気がするなあ。そこからもう一歩踏み込んだものが読んで見たいと思う。