ポール・オースター「シティー・オブ・グラス」角川文庫

僕は読み終わったときにこう叫んじゃいました。「わたしって誰だよ。」最後の3ページしか出てこない。でもそのあと叫んだことが恥ずかしくなりました。このわたしというのはもちろん作者のポール・オースターではない。この本を読んだ読者の事を指すんだと思う。解説に書かれてあるとおり、登場人物は誰かの分身である。要するに、登場人物は登場人物で完結してしまっているので、その完結を外から見ているのは本を読んでいる自分、つまり私しかいないんだろうかと思った。
後気になった点を。父親の方のスティルマンを、グランドセントラル駅で待っている時に、クィンは探偵としてのオースターになりきるんだ、と自分に言い聞かせていたのに、クィンの著書を読んでいる女を見つけると、読み方が気に入らなく感じてしまう。僕はおいおいと思ってしまったが、まだここではクィンであったためか。そして完全に事件の調査に没頭してしまい、オースターになりきってしまったがために、あの結末をむかえてしまったのかと思う。