ジョージ・R・R・マーティン 『タフの方舟1 禍つ星』 ハヤカワ文庫SF

まず雑感から。
帯に書いてあるほどタフはそんなにあこぎという印象は受けなかった。ただタフは自分のロジックに忠実に従っているだけなわけで。ただただルールに純粋に従うだけじゃないかな、そこに感情の入りこむ余地がないから、場合によってあこぎに見えるだけじゃないかなあ。思いっきり帯にあこぎと乗せるのはあんまり好ましくないんじゃないかなあと思った。
描かれている猫ぜんぶかわいい。膝に乗せたいよう。
次にそれぞれの編の感想。
「禍つ星」は一人称シューティングだと思った。もちろん自らがプレイしているわけではなく、賞金と、罰ゲームがある大会を、見ているというほうが正しい。誰が(少なくとも誰か一人)生き残るかということを、本の構成上前もって知っていることになってしまうから、少し冷めた目で見てしまったのが残念だ。解説にも書いているが、この編がサービス的な要素を含んでいるのであるからその辺は仕方ないと思う。まあ少し冷めたといっても、最終盤ではどうするのだろうなあとハラハラしながら読んでいた。
「パンと魚」は打って変って議論で行う静かな戦い。エンターテイメントの楽しみはその分減速されているが、惑星ス=ウスラムの社会背景や、抱える問題などが語られていて、SFらしくなっているなあと感じた。この編と次の「守護者」にある、人類への視点は、「サンドキングズ」であったような感覚と同じで、少し突き放しているんだけれど、なかなか興味深かった。
「守護者」はなんといっても大海獣バトルロイヤルだと思う。数多くの惑星から集められた、凶悪な海の生物と、もともと惑星に住んでいた生物との無制限一本勝負。これだけでカタルシスをえられると思うけれど、最後のオチもすっきり決まっていて非常に良かった。3編の中で一番のおすすめ。
というわけで次は「くらやみの速さはどれくらい」