J・ダン&G・ドゾワ/編 深町眞理子ほか/訳 『魔法の猫』 扶桑社ミステリー文庫

タイトルどおり、猫が活躍する小説ばかりを集めたアンソロジーである。活躍するといっても脇役で、単に作品に彩りを添えるために猫が出てくるのではなく、猫がプロット上必要不可欠な作品に限られている。活躍するといっても、ほほえましいものではなく、元来抱かれてきた不幸の前触れとしての猫のイメージをそのまま具現化したような作品も並んでいるので、猫がいとおしくてたまらないという人は注意が必要かもしれない。また、猫そのものに限定されていて、ライオンや猫型エイリアンが除外されている。おかげで、猫のかわいい、飼い主の膝の上で丸くなる、などの描写がいたるところに散りばめられている。良い猫も悪い猫も登場するけれど、みんなかわいいものです。一匹だけ、男として許せない猫がいたけど。
全部で17の物語が収録されている。うち既読は最初のふたつ、「跳躍者の時空」と「鼠と竜のゲーム」だった。まあ有名ですからね。恐怖あり幻想的な味わいありと作風はヴァラエティに富んでいるが、一番のお気に入りは「トム・キャット」。戦闘機はでてこないけれど、ジェット機族の国際社交家はでてくる、まあへんてこな話。最近こういう話がおもしろくてたまらない。