P・J・ファーマー 他 伊藤典夫/朝倉久志 編 『タイム・トラベラー』 新潮文庫

 新潮文庫で刊行されていたSFアンソロジーの第三弾。『タイムトラベラー』は時間コレクションと銘うたれているが、前二つは宇宙SFコレクションみたいだ。こっちも手に入れたら読んでみたい。
 解説の中で、時間は川であるという主張がなされている。その川の処理により、さまざまなバリエーションが生まれてくる。そうして誕生した作品を集めたのがこのアンソロジーとなっている。
 川であるからもちろん流れているけれど、一方向とは限らない。時間川のポロロッカだってあるし、泳いだり歩いたりすることも、支流に入って一休憩することだってできる。いろんなことを考える人はいるもんだ。まあさすがに二つの時間が衝突する話はこの中には含まれていない。
 ひとつだけどうしても我慢できない話があったのが残念だ。シモンズと同じアメリカ人の癖に良くあんな話をかけるもんだ。一番のお気に入りは「時間層の中の針」。話の出発点がおもしろいなあと思った。