スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 『バーナム博物館』 白水uブックス

 普段読まないようなジャンルの本を読むと、いつにもまして本を読むスピードが遅くなってびっくりしますね。SF読んでいても、がっかりするぐらい遅いのに、それ以上に遅くなるとは思わなかったなあ。
 『バーナム博物館』はゆっくり読むべき本であると思っているからいいのだが。「ロバート・へインディーンの発明」なんかは、強くそう思います。筋だけとらえていけば、世界の創造と崩壊なんだけれど、その創る過程に惹かれます。頭の中で想像して世界を膨らませ、現出させるのだけれど、その時何を強く思い浮かべるか、を過不足なく描いているのがいいなあと思う。実際の創造時には全てを思い描いているのだろうが、もちろんそんなものを描くわけにはいかないし、そんなものを読みたくない。だから取捨選択にセンスが表れるんじゃないかと思いつつ読んでいました。
 他に、「探偵ゲーム」が気になりました。登場人物、ゲームの駒たちの心理を描いている点がおもしろかったですね。登場人物にはもちろん表層と深層の心理があり、うまく描かれている。それと同じように、ゲームの駒にも二つの心理が与えられている(深層的な面しか描かれていない)、もしくは駒が勝手に想像している、というところがおもしろい。と考えてみると、プラム教授というのがまったく何をしているのかわからなくなる。だいたいこのプラム教授はどっちだったのだろうか。