[感想]アイザック・アシモフ編 『世界SF大賞傑作選5』 講談社文庫 

 本書には、1970年度のヒューゴー賞長中編部門、1971年度のヒューゴー賞長中編部門、短編部門の受賞作が収録されている。それではさっそく個々の作品の感想に移る。
 フリッツ・ライバー「影の船」
 一つの文だけで、それまでの世界の見え方が変わってしまう。いわゆるセンス・オブ・ワンダーを味わいたいならこの作品を読むべきだと思う。該当の個所を読むのはなかなかの快感でした。どんなに不注意に読んでも見逃すはずはないので安心して読めるのである。
一番のキモはわかりやすくていいんだが、よくわからない人がいて困る。通路にいるおばあさんはほんとにあれだけの意味があるんでしょうかねえ。
 フリッツ・ライバー「凶運の都市ランクマー」
 またまたライバー。この作品は〈ファファード&グレイマウザー〉シリーズの一編であり、いままでこのシリーズは読んだ事がなかったけれど、おもしろかったです。「エルリック・サーガ」の復刊に合わせて読んで行く事にしよう。ぼろ家の中にある宮殿の一室の描写が転々とする点が好きです。
 シオドア・スタージョン「ゆるやかな彫刻」
 再読。スタージョンにはほどほどがない。「愛」を求める「孤独」な作家だが、愛を求める過ぎると「輝く断片」になり、「孤独」が過ぎると「ニュースの時間です」になる、ような気がする。ではだれがスタージョンを救うのか、実生活でも作品上でも女性である。女性と上手くいくとぴったり収まるのだろうと思う。そんな事を、三つの話が絡み合う素晴らしい、変な作品を読みながら考えた。