[感想」スワヴォーミル・ムロージェック 長谷見一雄・吉上昭三・沼野充義・西成彦訳 『象』 国書刊行会

 2006年には世界規模のスポーツイベントが多く開かれる。今トリノで行われている冬季オリンピック、野球の国際大会であるワールドベースボールクラシック、日本で開催されるバスケットボール世界選手権などなど。しかし一番はなんといってもドイツで行われるワールドカップだ。
 ドイツワールドカップには日本代表ももちろん出場する。がんばってもらいたい。現地まで行くのはできそうにないが、近所迷惑になるぐらいにやかましく、噛りついて見るつもりだ。
 と書いてきたけれど、一番の注目は実はポルトガル代表なんです。ぜひとも優勝してほしい、いやここでジュールリメ杯取らなくてどこで取るのだと思うのです。
 4年前を思い出してみよう。本当はあの大会でもっと上位に行くはずだったのに。1989、1991年度のワールドユースを連覇した、いわゆる黄金世代の最初で最後のワールドカップだったのに。フェルナンド・コウトジョアン・ピント、マヌエル・ルイ・コスタ、もうみんな代表からいなくなってしまった。4年前の3試合での見所は第2戦でのパウレタハットトリックしかなかった。そして相手はポーランド代表だった。
 そのポーランド出身のスワヴォーミル・ムロージェックの短編集『象』である。これは『象』、『原子村の婚礼』、『雨』の3冊をまとめている。それぞれ簡単に特徴を述べておくと、『象』は当時のポーランドの社会状況を視野に入れた風刺小説、『原始村の婚礼』はなんだかよくわからない話が多かったような気がする、『雨』は奇想天外な話が多かったように思う。
 ざっと特徴を述べたところで気になった作品を。「協同組合「単身者」」は星新一ショートショートみたいだなと思った。「象」は動物園に象がいない。立身出世のためにゴム製の象をつくろうという設定で楽しみだったんだけれど、寓話色が強すぎて好みには合わなかった。「出発」とか「望み」のようなナンセンスさは好きですね。「望み」が個人的なベスト。あと、「王手」なんかは笑うこと必至な作品ですね。バラエティに富んだ作品集だったので、39作品もあったけれど飽きなかったなあ。