[感想」 ハニフ・クレイシ他 柴田元幸訳 『イギリス新鋭作家短篇選』 新潮社

 イギリス新鋭作家(といっても刊行された1995年時において)の短篇が5篇収録されているが、とにかくウィル・セルフ「尺度(スケール)」である。
 この短篇を評価できない人とも友達になれると思うけど、好きだという人間とはとても話の合う、良い友達になれそうな気がする。まずこの篇に対する僕の態度がこれ。
 妄想と夢想のスパイラル・コースターといったところだけれど、さすがアル中、薬中だっただけあってぶれぐあいがハンパじゃない。読んでいて笑うしかないエピソードがどんどんどんどん続いていく。ところどころ知性がみなぎっていて、なおいっそうよくわからないものになっている気がするのはどうなのだろう。モデル村に入っていくのと、体重計のエピソードがよかった。体重計を毎日見るたびにこの短篇を思い出しそうだ。
 期待も膨らんだところで、『元気なぼくらの元気なおもちゃ』を読むことにしよう。