[感想」 ジェフリー・A・ランディス 小野田和子訳 『火星縦断』 ハヤカワ文庫SF

 サバイバルを描くのに必要なものはなんだろうか?色々とありそうだけれど、重要なことは、周囲の環境を的確に細部まで描くこと、だと思う。サバイバルを強いられるということは当然普段の生活環境とは違うため、精確に描いてくれないと何が問題になってくるかも読んでいてつかめなくなってしまう。
 『火星縦断』は、この部分を上手く描けている。作者がNASAの現役研究者であるため、3の部分がとてもおもしろい。
 おもしろいと言っても、実際の火星の状況にはあまり詳しくないので、とてもリアルに描けていると言われても正直よくわからない。でも塵や埃が火星において重要な意味を持っているというのは読んでいてとてもよくわかる。
 塵や埃のような意識しないとあるかないかでさえよくわからないようなものも、環境が変わることによって生死を左右する重要な要因になる。火星上でのサバイバルとは関係ないけれど、宇宙ステーションの生活ではゴミ廃棄にもいろいろ気を配らなければいけないというはなしもでてくる。地球上だと決められた日に出すだけで良いんだけれど。
 こうした、地味な、ほかの作品ならうっちゃってしまいそうなことを地道に書いている作品というのは素晴らしいと思います。