コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」早川書房

少し前に「ドゥ―ムズデイブック」を読もうと言った記憶があるが、先にこちらを読むことになった。おかげで僕は早く読まなければと堅く決意することになった。
突然だが、僕は本を読むのが遅い。それもかなりの域に達しているんじゃないかと疑ってしまう。そんな僕であるから、大長編を読むのはかなりの覚悟がいる。もしつまらなかったらどうしようと。しかしそんな悩み事はたいがい顕現しない事になっている。実際は「なぜ早く読まなかったんだろうか」と思い、結局悩み事は去り、後悔だけが残る、という事になってしまう。
犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」がまさにその典型だった。最初の数ページを読んだ時に、ぐいぐい物語の中に引き込まれ、僕の悩み事は時空の彼方へ島送りの憂き目にあうこととなった。
個人的な事はさて置いて本の内容に移ろう。物語の中心はタイトルにあるように消えたヴィクトリア朝の花瓶を追う、ということだ。もちろんその謎を追っていく過程も、ミステリというのを全くわかっていない僕にも十分過ぎるほど魅力的だった。けれども僕にとって一番の魅力的だったのはキャラクターだ。人物はもちろん、猫や犬、果ては白鳥までに愛着を感じてしまう。彼らの織り成す言動にいちいち共感できる。例え「クァーッ!」や「シャシャーッ」といった泣き声でも。キャラクターの性格付けに嫌味にならない程度に癖があるのだと思う。
笑い泣きできる傑作だったと思う。