『恋人たち』 フィリップ・ホセ・ファーマー 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF

恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)

恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)

 読む前の知識として、性を題材にしたショッキングな内容ということを知っていたのだけれど、時代が違うのだと感じざるをえない。この内容で非難されるというのは今の感覚では理解できない。
 まあその点は置いておくとして、シグメン教という宗教が支配するヘイジャック連合に住むジョートという便利屋(つまり、蛸壺化しないように、ある専門分野の知識を広範に身につける人。専門は言語学。)のハル・ヤロウは、妻のメアリと教義についてや子供ができない事などでいさかいが絶えない。そんな折、彼はオザゲンという惑星への遠征隊に参加する。到着した彼を待っていたのは、その地にはいないはずの美しい女性、ジャネットだった、というのがあらすじ。
 出会ってからは終始いちゃいちゃしているのだけれど、二人の間の価値観が違い口論となる場合がある。ぼくの感覚とはジャネットのほうが近く、教義によってがんじがらめになっているハルを次第に解きほぐす形になっており、ハルが住んでいる地球の社会の異質さを出そうとしている。まあ宗教で厳格になった社会というのはよく見るのだけれど。
 もうひとつ見所があるのだけれど、これはとてもわかりやすいジーン・ウルフだろうか。まあ見たことはあるものの、とここまで書いて思ったけれど、書かれた当時は目新しいものだったのだろう。それが以降の作品に手法として使われている。こういった作品をクラシックと呼ぶのではないだろうか。