感想

竹宮ゆゆこ 『わたしたちの田村くん』 電撃文庫

ほとんど投票したいがために入手、購入。こうそっけないとおもしろくなかったみたいだけれど、おもしろかったです。相馬さんがよかったです。 というわけで僕は相馬派でした、透かし網のカーディガンにやられました。あの容姿、性格で透かし網のカーディガン…

コリイ・ドクトロワ 川副智子訳 『マジック・キングダムで落ちぶれて』 ハヤカワ文庫SF

ある人にとって深刻な悩みは、他の人から見ると滑稽に移るものだ。その悩みが間違っているとなおさらだ。主人公のジュールズが取る行動というのは滑稽だ。真剣に間違ったことをしているからなおさらな印象を受ける。でも不快感はなかったなあと思う。それよ…

デイヴィッド・イーリイ 白須清美訳 『ヨットクラブ』 晶文社

読んだりネットで検索などしたりして、乙一、イーリイ、スタージョンは似ているということに気付いた。三人異色作家でくくられているけれども、ここは独断と偏見で「何なんだこれは。」派とくくることに決めました。ちゃんちゃん。それでは各編の感想に移り…

ロバート・J・ソウヤー『さよならダイノサウルス』 ハヤカワ文庫SF

まずトロエドンくんがかわいかった。片方だけで行うまばたきであるとか、真夏のアスファルトにはだしで立っているように片方の足だけを地面に交互につけて立っているのなんてラブリーじゃないでしょうか。多分おめめもパッチリしているんだと思いますよ、黄…

新城カズマ 『サマー/タイム/トラベラー2』 ハヤカワ文庫JA

1巻の時はあまり楽しさを感じなかった。理由は何の関係もないように挿入されるただの衒学趣味としか思えない話。例えば、地域通貨の話であるとか。突然触れられたかと思うと、何事も無かったようにその話題から過ぎ去っていった。タイムトラベル小説を巡る…

ジョージ・R・R・マーティン 『タフの方舟1 禍つ星』 ハヤカワ文庫SF

まず雑感から。 帯に書いてあるほどタフはそんなにあこぎという印象は受けなかった。ただタフは自分のロジックに忠実に従っているだけなわけで。ただただルールに純粋に従うだけじゃないかな、そこに感情の入りこむ余地がないから、場合によってあこぎに見え…

飛浩隆 『象られた力』 ハヤカワ文庫JA

目で読むというより、体で読む本だなあと思った。 文章はとても蟲惑的でとてもひきつけられる。そうなるともちろん視覚に比重を置いてしまうのだが、この本を堪能するにはそれだけではもったいない。十分に楽しむためには、五感すべてを研ぎすませる事が不可…

イアン・ワトスン 『スローバード』 ハヤカワSF文庫

というわけでイアン・ワトスンの傑作短編集、『スローバード』。 序文にこんなことを書いています。 「アイデアやイメージを、ばかばかしさの論理的な執着点まで徹底的につきつめている。」 これは「大西洋横断大遠泳」という作品について語っているのですが…

イアン・ワトスン 『存在の書』 創元SF文庫

うん、なんか第3部は『宇宙消失』を思い起こしますなあ。 しかしゴッドマインドもワームもなんだったかよくわからん。 多分とはというのはあるけど自信無い。 円環構造の神話創造の話だったのかな。僕は『川の書』のようなサイエンスファンタジーよりも、難…

イアン・ワトスン 『星の書』 創元SF文庫

というわけで、黒き流れ3部作の2作目、『星の書』。 1作目の「川の書」が文字通り東西を分断する川の流れる、どこともわからない星を舞台にしていたけれど、今作では魂綱を通じてエーデンなんて聞いたような聞いたような星(というか地域)を舞台に中盤以…

イアン・ワトスン 『川の書』 創元SF文庫

本を読むということの一番の醍醐味は、現実の世界を忘れさせてくれることだと思う。剣と魔法のファンタジー、手に汗握るサスペンス、共感や後悔の感情を呼び覚ます恋愛小説、などそれぞれの個人にぴったりの形式を持っているはずだ。僕にとってのその形式は…

コニー・ウィリス『航路』[上・下] ソニーマガジンズ

コニー・ウィリスの小説は解説にも書いてあるけど「もどかしさ」だと思う。『航路』『ドゥームズディブック』『犬は勘定にいれません』それぞれにもどかしさの要素をみつけることができる。『ドゥームズディブック』では近未来パートにおいての「なにかがお…

グレッグ・イーガン『順列都市』[上・下] ハヤカワ文庫SF

まず、わからないなりに塵理論について考えてみる。 塵理論は、無数の代替世界の存在を意味していた。同じ原始アルファベット・スープで綴られた、異なる何十億ものありえた歴史。 という文章や、「分岐」、「合流」という言葉を見ると、おそらく平行世界の…

SFマガジンベスト①「冷たい方程式」ハヤカワ文庫SF

「接触汚染」キャサリン・マクレイン 異星でのバイオ・ホラーSF。物語の本筋は、異星の植民団が罹患した風土病「溶解病」の原因を探る、という事だ。けれども重要なテーマは容姿がアイデンティティに与える影響だ。真っ先に思い出したのはテッド・チャンの…

コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」早川書房

少し前に「ドゥ―ムズデイブック」を読もうと言った記憶があるが、先にこちらを読むことになった。おかげで僕は早く読まなければと堅く決意することになった。 突然だが、僕は本を読むのが遅い。それもかなりの域に達しているんじゃないかと疑ってしまう。そ…

山岸真編「90年代SF傑作選・下」ハヤカワSF文庫

「マックたち」テリー・ビッスン 重く、色々と言いたくなるような話を書いているけど、インタビュウの端々に見られるユ−モアが良い味を出していると思った。 「ホームズ、最後の事件再び」ロバート・J・ソウヤー ホームズは読んだ事無いんでよく分からなか…

小川隆・山岸真編「80年代SF傑作選・上」ハヤカワ文庫SF

「ニューローズホテル」ウィリアム・ギブスン サイバ―じゃないパンク作品といったところだろう。でもギブスンにはそんな事どうでもいいような気がする。とにかく文章がかっこいい。スタイリッシュで疾走感にあふれているっていうところだろうか。 「スキンツ…

ポール・オースター「シティー・オブ・グラス」角川文庫

僕は読み終わったときにこう叫んじゃいました。「わたしって誰だよ。」最後の3ページしか出てこない。でもそのあと叫んだことが恥ずかしくなりました。このわたしというのはもちろん作者のポール・オースターではない。この本を読んだ読者の事を指すんだと…

コニー・ウィリス「リメイク」ハヤカワ文庫SF

少し小難しくない奴をと選んだのがこの本。後ウィリスの本を読んでみたかったから。 予想されたとおり王道のラブストーリー。でも悪くない。一途に夢を追いかけ、実現してしまう。そこに至るまでにはもちろん多くの偶然、力(情報)を持った人間の助力はもち…

グレッグ・イーガン「万物理論」創元SF文庫

いつものごとく、きちんと理解しているのか怪しいのだが(むしろ理解していないとはっきり断言しても良いのだろうが)、それでも楽しく読めるものは読めるのだ。 とにかく色々なアイデアがぶちこめられている。題名にもなっている万物理論(略してTOE)は…

野尻抱介「べクフットの虜」ハヤカワ文庫JA

クレギオンシリーズの第7巻。もうすでにおなじみになったキャラクターの活躍を描いている(ドタバタコメディ?)。なじみになっているという点は僕にとっては魅力的だ。一からの人物描写はないので、すらすら読むことができた。もちろんなじみというのはマ…